レンガ創りの街並みはいつも決まって夕日に染まっている。

 雑踏。

 警官が道路の真ん中で笛を吹く。旗が上がると黒煙が道を被った。

 響きわたるのはけたたましい駆動音。

 それを避けるようにパイプの這う小路に足を向ける。


 今までの騒音が嘘のように遠ざかっていく。

 耳に入ってくるのは低く唸る駆動音とクラクションだけ。


 少し開けたところではジジイ共が酒を飲みながら賭け事をしている。

 ハゲ頭、ランニング、半裸、パンツ一丁で笑いながら。


 それを横目に歩き進む。

 太いパイプに飛び乗り、落ちないようにバランスをとりながら。


 小路を抜けると目の前には小さな公園。

 中央の噴水が爽やかな音を立て、子供たちが笑い、叫びながらはしゃぐ。

 木々が夕日に染まり、黄色い木漏れ日が噴水を輝かせていた。


 豆腐売りのラッパが蒸気の抜ける音と共に鳴り響く。

 アコーディオンの音が鳴り始めると子供たちは我先にと紙芝居の前に走っていく。


 僕はそれを眺めながら、次の小路へと滑り込むように入っていく。


 日の光が届かない路地の中。

 ふと見上げると青色に橙色を混ぜたような、なんとも言えない色の空に、小型のプレーンが飛行機雲を引きながら飛んでいた。


 暗い路地を抜けると、今度は商店街に出た。

 親子連れが、カップルが、おじさん達が、アーケードの中をゆったりと歩いている。

 威勢の良い魚屋の声、ゆっくり走るバイクの排気音、人々の雑踏とおしゃべりの声。


 いろいろな音の中を僕は迷わず歩いていく。


 そして、花屋の前に立ち止まった。

「おや、今日も来たのかい」

「ええ」

 花屋のばあさんに小銭を渡し、ライラックを一本買う。


 そして僕は、そのままもう一つの公園に向かう。

 以前は住宅地だった公園。そこには一機の朽ち果てたロボットが横たわっていた。


『英雄達に捧ぐ』


 そう書かれた献花台にライラックを供え、黙祷。

 そしてまた、雑踏に向けて足を踏み出した。

 遠くで汽笛の音がした。